テキストクリティーク

週刊誌ネタでごめんなさい。

引用開始

聖徳太子なんていなかった」かつては実在の人物として教えていたが,近年は「厩戸王」という有力な皇子がいただけという学説が有力になっているそうだ。

その上で,「厩戸王は厩戸,つまり馬小屋で生まれたという伝説があるが,これはイエス・キリストと同じです。遠く離れた文化圏において,聖なる人物の生まれた場所が同じなのはなぜか。皆さんも一緒に考えてみましょう。」

以上・週刊新潮11/30号・ヤン・デンマン・東京情報78ページから引用

もっとも,引用部分も,ヤン・デンマンなる人物の孫引き

私も,教科書の厩戸王標記について関心を持っていたが,ウソにウソを重ねるような文章だと思います。

そもそも,イエス・キリストなる人物と標記すること自体,まともな聖書読みではない。

ガリラヤに生きたイエスは実在したが,これをキリストなどと崇めたのは,ガリラヤでの活動とは無縁な,原始キリスト教団の伝承です。

エスの誕生を描き,飼馬桶に横たえたとするのは,ルカ・2:10だけです。

マタイ2章以下は,天上の王者キリスト誕生物語。

マタイは,誕生物語など触れてもいません。

共観福音書をきちんと読めば,イエスが馬小屋で誕生したなど,ルカないしルカの属する教団の教義なのでしょう。

厩戸王と馬小屋産まれが共通するなど,聖書読みの世界ではあり得ません。