慰謝料
精神的慰謝料
極めて低額であることに驚かされると思います。
例えば,愛犬を噛み殺された場合,幾らの慰謝料が支払われるでしょう?
大半の裁判官であれば,愛犬といえども物である。
物が損壊されたとしても,慰謝料は発生しないと考えると思います。
この点に関し,名古屋地方裁判所・平成18年3月15日判決
愛犬をかみ殺された飼主が,加害犬の飼主に対して求めた損害賠償請求につき,高額の慰藉料が認容された事例があります。
高額の慰謝料って,どのくらいでしょう。
正解は,飼い主3人分で50万円です。
精神的慰謝料の評価が,裁判官次第で異なるのは法の下の平等に反するという考えがあるのかも知れません。
だが,余りにも低額に過ぎるきらいがあります。
この点,刑事であれば,より柔軟な解決がされているように思えます。
懲役一年に処することは,一年間の自由を奪うと共に,一年分の年収を奪い取ることです。
年収300万円の被告人であれば,懲役6か月を加算することは,150万円を奪い取ることです。
この奪い取った年収が被害者に還元されないという問題はあるものの,今後,被害者参加・賠償命令の運用次第では,慰謝料の被害者への還元が可能になるかも知れません。
刑事にも量刑の幅があるとはいえ,上記のとおり,軽い刑であれば上下6か月程度,重罪であれば数年程度の幅のある量刑は現実に行われています。
刑事が精神的慰謝料に対する損害賠償請求を先取りすることが,民事の低額な慰謝料という運用を変えるきっかけになるかも知れないななどと愚考しております。
窮鼠猫を噛む
全国銀行協会等に加盟する銀行等は各自の排除条項により,現役の組員,準構成員,元組員には,口座を開かせないと決めている。
各銀行等は,自前のデータベースで調査。登録や削除に法的な取り決めはなく,内容も各社の判断に委ねられている。
TITLE:組を抜けて8年,口座開けぬ元組員 家裁が改名認める:朝日新聞デジタル
URL:http://digital.asahi.com/articles/ASJCX43V5JCXPTIL00P.html
改名を認めたことで,口座開設の可能性を開いたとする裁判例なのかも知れません。
だが,組員は,養子縁組等々で姓が変わることがしばしばですし,通名使用も当然の如く行われております。
家庭裁判所による改名手続よりも養子縁組あるいは偽装結婚による改姓の方が手っ取り早いと考える元組員の方が多いのではないかと思われます。
(参考までに前科照会データベースには,養子縁組,婚姻,離婚等による改姓,通名等での照会が可能となっております。)
さらに,反社会勢力を,金融機関から締め出すためのデータベースだという建前なのでしょうが,カネがアンダーグラウンドに廻るだけのような気もします。
取締強化によって,窮鼠猫を噛むような事態にならないかと危惧します。
麻酔影響下の譫妄か?
麻酔影響下の譫妄が疑われる事案です。
人質司法であるとか取引司法と呼ばれる保釈運用の実務は,現在もなお進行中のようです。
理論的な問題よりも具体的な事実関係を検討して健全な常識にあてはめた方がより良い結論が得られそうです。
以下,引用
他の患者さんとはカーテン1枚で隔てられているだけの一般病棟の4人部屋において,公訴事実のように医療者が,消毒液が塗布されたうえ,手術時の血液が付着している可能性の高い局所を舐めた,ということは実臨床の世界では全く想像できません。
しかも,その時には,患者さんの母親がカーテンの傍らにいて,薬剤師が向かい側のベッドの別の患者さんに薬剤説明を行っていたという病院側の調査結果事実を考慮すれば,公訴事実は疑わしくなります。
また,当該患者さんご自身がその行為事実を明確に記憶できる状態であったのに対し,隣の患者さんやその薬剤師,出入りする看護師に気が付かれない程度の拒否行動や,聞き取ることができないような発言すらできない状況を誘発する薬理効果がある薬剤は存在しません。
よって,本件公訴事実については極めて疑わしいと推測されます。
本件は,おそらく,麻酔影響下の譫妄(錯視)による性被害体験患者と,その体験供述による嫌疑を受けた医師と,いずれも気の毒な立場にある事件です。
TITLE:「手術直後にわいせつ行為」起訴後も不当勾留中の外科医師の保釈を要求する | 佐藤一樹
URL:http://www.huffingtonpost.jp/kazuki-sato/doctor_demand_b_13423380.html?ncid=tweetlnkjphpmg00000001
単冠湾
日本軍が太平洋戦争の戦端を開いた攻撃による犠牲者を慰霊するのが目的で,日本の現職首相が真珠湾を訪れるのは初めて
TITLE:首相,真珠湾訪問へ 26・27日,オバマ大統領と慰霊:朝日新聞デジタル
URL:http://digital.asahi.com/articles/ASJD566FFJD5UTFK014.html
真珠湾攻撃という言葉から,単冠湾(ひとかっぷわん)を連想します。
択捉島中部に位置する単冠湾に集結した連合艦隊が,真珠湾を攻撃したことで日米開戦の火ぶたが切られました。
そして,敗戦のドサクサの中で,択捉島は・・・失われた領土・・・となりました。
北方四島から,太平洋戦争を振り返るという視点があっても良いと思います。
長州でのプーチン会談では,北方領土問題に関し,何らかの進展があるとの報道が先行しましたが,いまやクエスチョンマークが多いように感じております。
特殊詐欺
朝から頭の体操をしました。
以下の問題です。
「特殊詐欺の受け子が,具体的に荷物を受け取るように指示を受けた時には,被害者は,警察に相談していて,荷物の中には,紙くずが入っていただけでした。ですから,彼が,詐欺未遂事件の共謀共同正犯になった時には,およそ詐欺未遂すら起こらない段階だったのです。このような場合,詐欺未遂罪が成立するのでしょうか?」
私の考えは,次のとおりです。
特殊詐欺といっても,詐欺の構成要件は共通であり,欺罔行為の結果,被害者が錯誤に陥り,錯誤に基づく処分行為として財物あるいは財産上の利益の移転があった場合に既遂に達する。
架け子が,巧妙な電話を架けた段階で,欺罔行為が開始されたのであり,既にこの段階で詐欺未遂罪が成立していると考えます。
架け子のウソを見破った結果,被害者が警察に相談して,紙くずと交換したという事案のようですが,およそ人をして錯誤に陥らせる可能性のある行為であれば欺罔行為と評価するに十分だと考えます。
被害者が錯誤に陥らなかったとしても,欺罔行為が成立している以上,すでに未遂罪が成立しており,この段階から関与した受け子も詐欺未遂罪の共犯としての責めを免れないと考えます。
この問題については,類似事例について,福岡地裁で無罪判決が出ております。
被告男性は,知人から紹介された何者かの指示を受け,荷物を受け取るために大阪市内のマンションの空き部屋へ赴いた。
部屋で配送業者を装った警察官から荷物を受け取り,現行犯逮捕された。
TITLE:「だまされたふり作戦」受け取り役に無罪判決 福岡地裁:朝日新聞デジタル
URL:http://digital.asahi.com/articles/ASJ9D53QZJ9DTIPE01S.html
但し,福岡地裁の無罪判決については,9月23日付けで検察官控訴されている模様です。
他方,同種事案で,高裁無罪判決もあるようです。
但し,新聞報道レベルですが,「判決理由で『詐欺グループは被害者がだまされたふりをしていると認識しておらず,金を詐取するつもりだった』と述べ,詐欺グループと共謀していれば男性にも詐欺未遂罪が成立すると判断した。」と判示されている模様です。
TITLE:詐欺共謀認めず「受け子」男性に無罪 名古屋高裁,一審判決支持 - 産経WEST
URL:http://www.sankei.com/west/news/160921/wst1609210047-n1.html