姦通罪の処罰:親告罪

かなしきは人間のみち牢獄みち馬車の軋みてゆく礫道

人間であるが故に犯してしまった恋の過ちのために,監獄へ続く小石だらけの道を,軋むように揺れる馬車に乗せられて行く心境を歌った歌(前掲書64ページ)。

姦通罪の容疑で,留置場へと運ばれる姿であるそうだ。

もっとも姦通罪は,親告罪であり,告訴取消しによって処罰は免れたようである。

しかしながら歌人とは,自らの収監体験,それも破廉恥なる罪名での体験をもしたためるものなのだなあと思う。

昨今の一線を越えた云々の世界ではなく,刑事罰の世界であり,しかも相手もある事柄である。

白秋の地位が,秘め事にすることを許さなかったのか,すでに広く報じられてしまったのか知らないが,常人であれば,心の内まで公にすることはなかっただろうと思う。