民事脅迫システム

民事脅迫システム

民事では,「請求棄却・ゼロ回答もありますよ。」と脅して和解に持ち込むという手法も可能です。

まず,民事では,事実①,事実②,事実③の全てが立証された場合に,例えば損害賠償請求権などの,法律効果Xが発生するというルールになっています。

そして三つの事実のうち,ひとつでも否定されたら,ゼロ回答になります。

議論はありますし,最近証拠能力を否定した高裁判決が出ているものの,未だ民事では証拠能力の制約はないと解するのが多数説のようです。

そして証明力については,自由心証主義が支配します。

そうすると,余りに極端な判断でなければ,事実①は信用出来ないとして排斥することが可能です。

この点,刑事であれば,自白調書が全部排斥されたり,骨格をなす証拠が違法収集証拠として排除されれば,無罪となる見通しがありますが,民事では,事実①を採用するか否かは裁判官の心証次第です。

実例は幾らでも挙げられます。

刑事では,一審と控訴審で逆転判決となることは極めてまれです。

これに対し,民事では,高裁で逆転判決が出たり,高裁段階での和解事案など珍しいことではありません。

民事で争いのある事件は,要するに全て否認事件であり,事実①が立証されるか否かは未知数だといっても過言ではありません。

民事脅迫システムが機能する由縁が,ここにあります。

大昔の法格言として,「和解判事となるなかれ。移送検事(事件を他の地検や支部に送りつけて自ら処理しない)となるなかれ。」とありますが,民事脅迫システムを利用した和解判事は,ゼロではないようです。