特殊詐欺

朝から頭の体操をしました。

以下の問題です。

「特殊詐欺の受け子が,具体的に荷物を受け取るように指示を受けた時には,被害者は,警察に相談していて,荷物の中には,紙くずが入っていただけでした。ですから,彼が,詐欺未遂事件の共謀共同正犯になった時には,およそ詐欺未遂すら起こらない段階だったのです。このような場合,詐欺未遂罪が成立するのでしょうか?」

私の考えは,次のとおりです。

特殊詐欺といっても,詐欺の構成要件は共通であり,欺罔行為の結果,被害者が錯誤に陥り,錯誤に基づく処分行為として財物あるいは財産上の利益の移転があった場合に既遂に達する。

架け子が,巧妙な電話を架けた段階で,欺罔行為が開始されたのであり,既にこの段階で詐欺未遂罪が成立していると考えます。

架け子のウソを見破った結果,被害者が警察に相談して,紙くずと交換したという事案のようですが,およそ人をして錯誤に陥らせる可能性のある行為であれば欺罔行為と評価するに十分だと考えます。

被害者が錯誤に陥らなかったとしても,欺罔行為が成立している以上,すでに未遂罪が成立しており,この段階から関与した受け子も詐欺未遂罪の共犯としての責めを免れないと考えます。

この問題については,類似事例について,福岡地裁で無罪判決が出ております。

被告男性は,知人から紹介された何者かの指示を受け,荷物を受け取るために大阪市内のマンションの空き部屋へ赴いた。

部屋で配送業者を装った警察官から荷物を受け取り,現行犯逮捕された。

TITLE:「だまされたふり作戦」受け取り役に無罪判決 福岡地裁朝日新聞デジタル

URL:http://digital.asahi.com/articles/ASJ9D53QZJ9DTIPE01S.html

但し,福岡地裁の無罪判決については,9月23日付けで検察官控訴されている模様です。

他方,同種事案で,高裁無罪判決もあるようです。

但し,新聞報道レベルですが,「判決理由で『詐欺グループは被害者がだまされたふりをしていると認識しておらず,金を詐取するつもりだった』と述べ,詐欺グループと共謀していれば男性にも詐欺未遂罪が成立すると判断した。」と判示されている模様です。

TITLE:詐欺共謀認めず「受け子」男性に無罪 名古屋高裁,一審判決支持 - 産経WEST

URL:http://www.sankei.com/west/news/160921/wst1609210047-n1.html