公正証書遺言無効
公正証書遺言無効に関する一事例
東京地方裁判所平成28年3月25日判決/平成26年(ワ)第34416号・公正証書遺言無効確認請求事件
主 文
1 東京法務局所属公証人法律達人作成に係る平成1X年第1QQP号遺言公正証書による亡Aの遺言が無効であることを確認する。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
理 由
(遺言能力)これらの言動からすると,Aは,本件遺言証書作成当時(当時85歳),既に認知症に罹患し,その症状が進行を始めていたものと考えられる。
(遺言作成過程)前記認定のとおり,本件遺言証書は,法律達人公証人がF弁護士の作成した文案を基に原案を作成し,これをAに示した上で読み聞かせるという手続を経て作成されたものであり,そこでは,Aに対する一応の意思確認手続が行われている。
しかしながら,前記認定のとおり,本件遺言証書には3か所に誤記があり,少なくともそのうち相続すべき者に係る2か所の誤記は,F弁護士が作成した文案において既に存在していたところ,Aは,この文案を,2度にわたってF弁護士の事務所で目の前に示され,また,法律達人公証人が作成した本件遺言証書の原案についても,公証人役場で目の前に示された上,全文の読み聞かせを受けたにもかかわらず,いずれの機会にも誤記を指摘することがなかったというのであり,このことからすると,Aは,上記文案及び原案の内容を十分に認識することができていなかったものと認めるのが相当である。
このように,Aにおいて上記文案及び原案の内容を十分に認識することができなかったのは,Aが,本件遺言証書作成当時,認知症その他の理由により,その内容を理解する能力を欠いていたためであると考えられる。
(結論) 以上によれば,本件遺言証書による本件遺言は無効であるから,その確認を求める原告の請求は理由がある。
認知症を理由とする公正証書遺言無効事件は,かなりの件数あります。
簡略な方法ですが,以下のテストを試した上で,公正証書遺言の作成に臨まれた方が,後々の相続争いを減少させるかも知れません。