普遍的価値?

宗教は,超人間的な秩序の信奉に基づく,人間の規範と価値観の制度と定義できる。

(宗教が)本質的に異なる人間集団が暮らす広大な領域を傘下に統一するためには,さらに二つの特性を備えていなければならない。

1)いつでもどこでも正しい普遍的な超人間的秩序を信奉している必要がある。

2)この信念をすべての人に広めることをあくまで求めなければならない。

言い換えれば,宗教は普遍的であると同時に,宣教を行うことも求められるのだ(サピエンス・下巻・11ページ以下)。

本当であろうか。

キリスト教の中でも,カトリックプロテスタントに大別され,プロテスタント諸派に別れる。

さらに,キリスト教の旗印を掲げる新興宗教もある。

そして,布教に熱心なのは,新興のキリスト教系宗派のようである。

仏教あるいは神道系宗派においても,布教に熱心なのは,新興教団のようである。

各種教団・教派が乱立している。

宗教が普遍的な価値を追い求めるとしても,それは教団・教派の数だけある普遍性であろう。

無数に普遍的価値が存在すると仮定するならば,それは教団・教派ごとに特殊な価値を追い求めているというに過ぎない。