誘導事故

誘導事故に関する判例紹介

東京地裁 昭和52年8月30日判決

給油所において,大型貨物自動車が給油後の後退の際に,給油所従業員の誘導により計量機に接触し破損させた事例。従業員の誘導指示に過失があったことから,給油会社の損害賠償請求に対して,20%の過失相殺を認めた。

山口地裁 平成4年5月25日判決

道路改修工事のため道路片側通行にしていたケースで警備員の指示ミスにより警備会社に10%の過失を認めた例。

大阪地裁 平成6年2月24日判決

交差点手前の工事現場先で,前方信号が赤であるにもかかわらず,工事現場の警備員が進入可能の白旗を振ったため交差点に進入した加害車が,青で進入してきた被害車と出合頭に衝突した事故について,加害車運転手と警備員の双方に過失を認め,その割合を4対6とした事例。

福岡高裁 平成9年3月25日判決

交通事故で受傷した被害者に対し,任意保険会社が一括支払いシステムで保険金支払いした後,誘導員の指示ミスも不法行為と判断されたため,共同不法行為者たる警備会社へ求償金請求した事案につき,任意保険の求償の範囲は,自賠責分を控除した額を共同不法行為者に求償できるものと解された事例。

東京地裁 平成15年9月8日判決

交通誘導員の指示にしたがって右折できるものと過信して信号及び対向車を確認しないで交差点を右折したところ,対向車線を直進してきた車両と衝突した事故につき,右折車両運転手と交通誘導員の過失割合を70対30とした事例。

警備会社には使用者責任がある

警備会社が責任を負うのは民法715条の使用者責任によるものです。誘導ミスを起こした当の警備員は民法709条責任です。この警備員と警備会社は,いずれも被害者に対して全額の賠償義務を負う関係にあるとされ,そのことをさして不真正連帯債務の関係にあるといいます。今回のケースでは警備員に過失があるとともに,被害者である相談者にも過失があったものと思われるため,被害者の責任割合に応じた損害賠償請求が,警備員個人に対してあるいは警備会社に対して可能です(実際は,会社に対して請求するのが一般的です)。