30件限界説
若手弁護士の中には,同時並行で百数十件の事件を受任している者がいるらしい。
流行っている証拠であると共に事務所経営のために,やむを得ない受任であるらしい。
ところで,私は,同時並行で30件以上の事件は受任しない方針である。
その理由は,とある訟務部副部長長判事が言われた「私は,30件以上の事件を担当されている弁護士さんを信用していない。」という言葉に由来する。
民事事件は,よほどの大事件でない限り,ひと月あるいはひと月半ごとに弁論期日が入る。
一ヶ月のうち,土日を除くと20日間が法律事務所営業可能時間である。
事件は,弁護士一人で動かしているわけではなく,事務員さんらの協力がなければ回転しないのであるし,事務員さんらに土日休暇を保証しなければ労働基準法違反となる。
そうすると信じられないことに,30件以上の事件を受任すれば,一件当たり丸一日すら事件に集注できないこととなってしまう。
これが30件限界説の根拠であり,これを遵守してきた。
もっともこれは弁護士登録後の話である。
福島地方検察庁郡山・白河支部長当時は,両支部併せて年間一万四千件の事件を処理してきた。
もちろん、この数字の中には交通切符裁判等も含まれているが,正式裁判事件等当然ながら神経がピリピリする事件が多数を占める。
では,なにゆえ,かような処理が可能であったのか。
それは,両支部併せて40名という有能な副検事さん・検察官事務取扱検察事務官さん・若手検察事務官諸君らに支えられてきたからである。
なにしろ,郡山・白河支部長当時は,決裁官であり自分自身の事件は持たなかった。
かように組織力に支えられていたからこそ大量事件・的確・迅速処理が可能だったのである。
弁護士一人の肩に担える事件量は,どれだけ頑張っても同時並行30件の壁を越えることは出来ず,これ以上受任すれば,一件一件真剣に向き合うことなく,雑になるだけだと考えている。
したがって,事件相談を請けても,受任できないことがあることは承知して頂きたい。