投票の価値の平等

理念的問題(国民代表と国民代理との違い)と現実的問題(地域代表ないし地域間格差是正)とを切り分けて考察する必要があると思う。

特に前者は憲法の基本原則であるにも拘わらず意識的論調とされていないきらいがある。

東京に原発及び最終処分場を建設するという政権公約は,電力生産地と消費地を最短距離で結び電力放電ロスを抑える経済的効力がある。しかも絶対安全というお墨付きは得られないものの最高水準の技術規制に適合するという保障は得られるのであるから,全く無理難題ではない。(あくまで仮定論であり,本気でかような政権公約を掲げるか否かは別である。)

この政権公約で当選できるか否かはともかく仮に当選した場合,候補者はこの政権公約に拘束されるであろうか。

国民代理であれば,委任者と受任者との法的代理関係であるから,公約に拘束されて公約違反は罷免事由となる。

ところが国民代表は,選挙集団と切り離されて大所高所にたった判断を求められる立場にあるから,公約に拘束されることはない。

このあたりの議論は,かなり古い議論であるが,宮澤俊義憲法の原理に詳しい。

古い書物とはいえ日本国憲法の原理原則に立ち返った研究書である。

日本国憲法の立場はあくまで国民代表である。

選挙区を純粋な有権者人口比率割とすれば,都市部有利となるであろうが,都市部選出議員も大所高所にたった国民全体の利益のために奉仕するべき存在であるという理念的問題からすれば,全く不合理な議論とまでは言えないように思われる。